植木夫妻の家づくり日記 後編 「梅雨の合間の草取り」
■軽トラックを国分さん宅に預ける
東日本大震災が起きてから3か月経った。被災地の復興はなかなか進まない。福島第一原発に至っては、まだ危険な状態が続いている。放射能の影響は予想以上に深刻だ。浪江町は二本松市に役場機能を移転となり、美郷の家に滞在していた「高橋さん」一家は、二本松市街地の借り上げアパートに移転された。
梅雨の雨が時折降る中、18日土曜日の夕方、妻が仕事から帰宅するのを待って福島に向かった。翌朝はよく晴れ、気温もぐんぐん上昇。そんな暑い中、恒例の庭の草刈。それと台所脇の窓と2階の北側の2つ窓に、ロール式の網戸を取り付けた。
冷房のない家なので、夏は窓を開けっ放しで風を通して過ごす。南側の窓はすでに取り付けたが。北側もやはり必要だと感じたので、通販で割引の網戸を購入しておいたのだった。
昼前に、高橋さんのお姉さん・佐藤さんに連絡してみる。美郷の家を出るに当たって綺麗に掃除をしていってくれたので、ひとことお礼をということで、妻の携帯から連絡をした。すると駐車場に置いてあった高橋さんの軽トラックについて、ちょっと驚いた話があった。
高橋さんが引っ越された後、ある日軽トラック荷台に多く石が投げ入れられたというのだ。車だけでなく近隣の家の駐車場にも石が投げ入れられていた。物騒なので、気にして、軽トラックは引っ越し先に持っていったというのだ。
昨晩到着した時、駐車場に車がなかったので、高橋さんが持っていったのだろうとは思っていたが、そんな事件があったとは考えてもみなかった。アパートの近くに置いてあるとなると駐車場代もかかるだろうと、軽トラックは、できたら国分さんの所で預かってもらえるよう交渉してみることにした。
早速、午後国分さん宅に伺う。畑の草取りを手伝う。それと先月、U字溝を入れた湧水のところを見てみたら、コンクリートの管が埋め込んであった。今度ここ水が出るようなポンプを付けるという。そうすれば、きれいな水がどんどんでてくるというわけだ。ちょっと楽しみである。
ひと作業をした後、軽トラックの件を国分さんに話してみたら、快く引き受けてくれた。早速、佐藤さんに連絡を取ると、軽トラックを持ってきてくれるという。下長折までは大変なので、安達が原の「ふるさと村」で待ち合わることにした。夕方、佐藤さんと妹さんの高橋さんとで、軽トラを持ってきてくれた。久しぶりに挨拶をし、「ご主人によろしく伝えてください」と言って別れた。国分さん宅に戻り、敷地内の空き地に軽トラを止めてもらう。これで薪と薪置き場を作るための木材を積んで持って行ける。翌日の午後、また訪れることを国分さんに約束して、美郷に戻った。さすがに昨日夜半についてから、1日動きっぱなしだったので、夕食を終えるとバタンキューという感じで寝てしまった。
■電話工事と大平仮設住宅の見学
翌日の午前中は、NTTが電話の取り付け工事に来た。妻の母方の実家━━新潟の空き家にあって休眠状態にしてあった「電話」を、そろそろ期限切れになることもあって、美郷に引っ越しさせ、取り付けることにしたからだ。
9時頃、NTTの人が来る。家の中に入ってきた年長の設備工事の人が柱を見て「これはすごい!! これだけの柱、手に入らないでしょう」と驚いていた。1時間ほどで工事は完了した。あとは電話機を付ければOKだ。
工事をしてい間、私は物置の脇に薪置き場を作るための目印の杭を打っておいた。
昼食は、「安達が原のふるさと村」のレストランに行ってみることにした。4月末からここのレストランはリニューアルされており、地元の野菜を地元の主婦たちが料理し、ビュッフェ方式でいただくものだという。以前のレストランは定食屋のようなもので、内容もイマイチだったで、どんな風に変わったのか、ちょっと興味があったからだ。
値段1250円。ちょっと高めだが、食べ放題ということならこの価格でもいいだろう。味もまあまあ美味しい。トマトのゼリーがちょっと珍しくて人気だった。夜も予約なら受け付けるという。ただ野菜が中心のヘルシーなもの。郷土料理が中心だが、パスタやサラダなど女性や若年層も意識したものとなっている。ただ野菜だけなので、ヘルシーすぎる感もある。麺や肉とうまく組み合わせてボリュームのあるものにしたり、野菜の調理の仕方も工夫したらもっといいだろう。メニューの種類ももう少し増やし、旬の野菜を飽きないように提供すれば、せばリピーターが増えると思った。、
昼食後、国分さん宅に向かう途中、大平公園の仮設住宅の現場に立ち寄ってみた。芳賀沼製作のHPで、見ていたのでログの仮設住宅ってどんなものだろう気になっていたからだ。残念ながら現場には、芳賀沼製作の方たちは居なかったが、仮設住宅を少しのぞいてみた。
内装工事にかかっているところだったが、ちょっと拝見してみた。壁は木材が井桁に組んである。これなら、よくあるプレハブ住宅のように「夏の暑く、冬の寒い」ということも少なく、「仮設住宅でも快適かも」と思った。
国分さん宅に行ってみると、庭のさつきの剪定をしていた。それを少し手伝った後、今度は震災で崩れてしまった石灯篭を直す。けっこう大きい石なので、ユンボウにワイヤーを付けて吊り下げて、元の位置に戻す。その後は、アスパラ畑の雑草むしり、庭の雑草取りも行った。■放射能の影響が……
雑草取りをしながら、国分さんと原発のことや野菜の話をする。数日前に、国分さんは東和地区の関さんと会って、飲みにいったという。同じ二本松市地域の有機農業者として交流をしているようだ。こうした農家の方たちが集まって、いい野菜作りの輪が広がるのは素晴らしいことだと思う。
そしてまた原発の話題も出た。実はこの二本松地域も場所によって放射線濃度が高く、浪江町から避難してきた人の放射線剣先で図ってみたら、さくらの犬小屋のあたりの放射能数値がけっこう高かったのにショックを受けたとのこと。原発事故の影響の深刻さを改めて認識した。
「しばらくは、原発周辺の地域の土地は使えないだろうから、そこに太陽光パネルを敷き詰めて発電し、それを東電に売って、福島の復興の資金にしたらどうかという案も出たんだよ」と言う国分さんの話に、私たちは大賛成をした。
とにかく、できるだけ早いうちに「第一原発の事故処理が終える」ことを願うばかりだ。
帰り際に、紅葉の苗木をもらった。翌朝、それを庭に植えた。はたして木になるだろうか?そして、いつものように掃除をし、「道の駅 あだたら」で買い物をして帰路についた。来月は、ちょっと芳賀沼製作に夏のご挨拶に行き、久しぶりに「ふるさと宿」に泊まることにした。また、南福島の菅野さん宅にも暑中見舞いに伺おうと思う。そして、なかなか出来なかっった薪置き場も作りに取りかからねば……。
けっこう予定がいっぱいで忙しくなりそうだ。